古今東西の悪魔に関する話を集めた本。中世の魔女狩りや、昭和の怪事件「赤マント」など、話題が拡散しすぎてる感もあるけど、よく言うとバラエティに富んでいて面白く読んだ。
”悪魔”という存在の形而上学的、神学的な考察が印象に残った。キリスト教において、神と悪魔の関係をどう解釈したのかという話。
神は(1)善で(2)全知全能である。悪魔の存在はこの前提を突き崩す。悪魔は神によって創造されたか、神から独立した存在か、どちらであるが、
教父たちは考えた。悪が神から生じることはありえない。なぜなら悪は神と対立するものだから。
すなわち、神によって創造されたとすると、神の特質(1)善であることの否定となる。じゃあ、やっぱり神から独立した存在なのかと言うと、
悪魔は独立の原理ではありえない。存在するすべては神から生じたのだから。
同p.31
今度は神の特質(2)全知全能であることの否定となる。どちらにせよ神の否定に繋がってしまうのだ。この矛盾から導かれる結論は次のとおり。
とすると悪は、それ自体が無であって存在そのものの欠如にあたり、部分的な欠乏ということになる。存在するのではなくて存在の影。
同p.31
悪魔とは存在の欠如、空虚である。この定義分かる気がする。読んでいてぞっとした。(が、よく考えると、この解釈でも神の全能性を否定してる気がしないでもない。。)