リアリストとロマンチストのどちらかで言えば、自分は後者だと思っている。だからなのか、主人公の代助に同情して読んでしまった。
世間体も生活の安定も、何もかも捨てて、愛する人妻と生きていくという決断は、美しい。立派だ、良くやったと思った。そして、平岡が代助の父親に手紙で経緯を知らせたことについて、何という卑怯な奴だと感じた。
この先代助には恐ろしい運命が待っていることだろう。恐ろしい出来ごとは、起きている最中より、起る予感の中にいる時の方が、より恐ろしい。そんな予感の場面で小説は終わっている。漱石先生えぐいっす。せめて代助と三千代は会わせてあげて欲しかった。
相変わらず描写が美しい。花が香り立つシーンが印象的で、むっと甘い雰囲気が漂っている。
次は『門』かな。