ラブロマンス要素より、パニックものの印象が強く残った。それにしても怖い。何が怖いかというと、物理現象が怖い。
氷山にぶつかった後、タイタニック号の設計者が次のように言う。
「沈没を防ぐ手はないんだ。タイタニックは海に沈む」
「沈まない船なのに?」
「鉄で出来ている以上沈みますよ。物理的に言って。沈むのは確実です」
比重の大きな鉄は海に沈む。水は低きに流れる。そのことで何百人の尊い命が失われようが関係ない。
物理現象に情状酌量はない。人間の事情に頓着しない。まさに
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映画の中で一番怖かったのは照明弾のシーン。沈みかけ、混乱する船上から照明弾が打ち上げられる。刹那に、はるか遠くの上空からタイタニックを眺めるカットに切り替わる。広大な暗黒の海、その真中に小さくタイタニックが浮かんでいる。照明弾の光のあまりの頼りなさ、船を取り巻く闇のあまりの大きさ、その対比が絶望を雄弁に語る。寒気がした。
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恋敵のキャルは、実際付き合うのは嫌だが、映画の悪役キャラとしては好きだ。手段を問わず、何としても生き残ろうとする執念がよい。冷静沈着だが一瞬ブチ切れるところもいいと思った。