素人にはレベルが高すぎる本でした。なんとか理解できた、イスラームの特徴についてだけメモを残しておきます。
イスラームの特徴
イスラームはネットワークの原理である
イスラームの生まれた7世紀のアラビア半島は、世界的な交易の通路だった。ササン朝ペルシアとビザンティン帝国の戦争により、メソポタミアを通るルートが衰えていたためだ。
多様な人々の交易ネットワーク、そのような環境における統治原理や生き方の原理が求められていた。これに応えたのがイスラームだ。
イスラームは宗教であり、商業原理であり、多様な人々のコミュニケーション可能な空間における社会生活の原理であり、交易ルートの安全を担保する軍事組織の原理でもあるわけである。
イスラームは多様な人々のネットワークにおける原理なのである。
イスラーム世界は開かれている
イスラーム世界は対外的に開かれており、ネットワークを拡張していく特徴をもっている。
イスラームにおいて、自分や相手がどんな集団に帰属しているかという認識は、時と場合によって伸縮自在である。(宗教的なコミュニティにおいては複数の預言者とその集団を認めるミッラの概念、家族に関わるコミュニティにおいては「誰の子孫」の「誰」を自由に設定することによる)こうして、異質な社会集団や個人の差異を受容し、ネットワークを広げていくのだ。
様々な差異を受容し続けると、いずれ混沌に陥るのではないだろうか。そうはならない。現世の個物である自己や「族」などを超越したところに、イスラームのタウヒード(「一つにすること」「一つと数えること」「一つに帰ること」)という原理を置くことにより、これを防いでいる。
イスラームは砂漠性と都市性を持っている
イスラームは砂漠性をもつ。しかし、この「砂漠」とは、空虚な世界を意味しない。対立物が対立のまま統一されている、想像と破壊が同時に起っている世界としての「砂漠」である。
またイスラームは都市性をもつ。なぜなら、ヒューマン・コミュニケーションのための倫理・信仰システムであるからだ。
そして、砂漠性と都市性は矛盾しない。想像と破壊が同時に起る「砂漠性」は、「都市」という舞台においても発揮される。過去1400年の歴史を見ると、イスラームはそれぞれの時代の中心的都市に影響を拡大しており、現在においても同様である。
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上記の内容は本書のほんの一部です。
このほかに、西欧の東方世界の見方”オリエンタリズム” と、イスラミック・ファンダメンタリズム(イスラム原理主義)との関係(後者が前者の反転であること)や、イスラミズムの勃興の原因の考察などが述べられていますが、ブログ筆者にはまとめる力がありません。難しい。
サイードの『オリエンタリズム』は読んでみたくなりましたが、きっと難しいんだろうなあ。
最終章「イスラームと日本」については、ブクログの”おちょう”さんのまとめがとても参考になりました。
『日本人にとってイスラームとは何か (ちくま新書)』(鈴木規夫)の感想(3レビュー) - ブクログ