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『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』の感想 悪魔の怖さと人間賛歌

 

荒木先生が好きなホラー映画について語る本。深く批評するというよりは軽妙なトークといった感じで、読んでいて楽しい。

気になったのが「悪魔が一番怖い」というところ。

 といってもキリスト教徒が信じる悪魔とは違い、僕の考える悪魔というのは人間の罪が生み出したものです。つまり暴力を振るわれたり、戦争で死んだり、愛を成就できなかった人たちの怨念が何千年にもわたって蓄積した、いわば負のエネルギーの塊のようなものをそう呼んでいます。したがって人類に知性が備わった時から悪魔もいる。そして何かのきっかけで、負のエネルギーが一点に集まるような形でそれが具現化してしまう。何万年も存在するからには、物凄いエネルギーじゃないかと思うわけです。

 だからそういうものをおろそかに扱ってはいけないわけで、ホラー映画でも悪魔の出る作品だけは、安易に作るべきではないというのが僕の考えです。

荒木飛呂彦荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』 集英社,2011,p.192-193

ジョジョの奇妙な冒険』のスタープラチナ ザ・ワールドの設定で、承太郎の全盛期には世界の時を5秒止めたというのを読んで、痺れたことがある。一人の人間の力は、全宇宙の物理法則に伍するという設定だからだ。(同じような衝撃を受けたのが『AKIRA』のアキラが、もう一つの宇宙を創造するという話。余談)

ジョジョ』のテーマが人間賛歌であるということは有名だけど、荒木先生は人間の心の力に大きな信頼を置いている。正の力を信頼しているのに比例して、負の面に恐れを感じているから、上記のような考えを持っているんだと思った。

 

初めて知った映画も多くあり観てみたくなった。章扉にあるスケッチもかっこよい。

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出典:前掲書 p.63

 

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