前書き
5つのデータがあったとする。例えば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんのテストの結果5つ。その平均値をAve1、中央値をMed1とする。
5つのデータの値が、それぞれすべて小さくなった場合を考える。すなわち、もう1回テストを受けたら、全員成績が下がった場合。
この平均値をAve2、中央値をMed2とする。
Ave1 > Ave2
これは分かる。明らかである。
じゃあ、
Med1 > Med2
なのかと言われると、すごーくそんな気がするけど、今一歩確信が持てない。順序が入れ替わったりするから、意外とMed1 = Med2 となることもある気がしないでもない。(自分だけ?)ということで、証明を考えた。間違ってたら教えてください!
証明
例として、データの大きさが5つ(A,B,C,D,E)の場合を考える。それぞれのデータの値をA1~E1とする。
データを小さい方から並べると、
A,B,C,D,E
であったとする。この時、
A1≦B1≦C1≦D1≦E1 (1)
であり、中央にあるデータはCであるから、中央値は
Med1 = C1 (2)
である。
次に、それぞれのデータの値が小さくなり、A2~E2になったとする。
A1 > A2,B1 > B2,C1 > C2,D1 > D2,E1 > E2 (3)
この時の中央値Med2について、3つの場合に分けて考える。
[1]場合1:Cがデータの中央にある場合
データを小さい方から並べると
?,?,C,?,?
となる場合、データの値の大小関係は次のようになる。
? ≦ ? ≦ C2 ≦ ? ≦ ?
よって、中央値は
Med2 = C2 (3)
である。
したがって(1)(2)(3)より
Med1 = C1 > C2 = Med2
すなわち、Med1 > Med2
[2]場合2:Cが中央より後半にある場合
データを小さい方から並べると
?,?,?,C,?
もしくは
?,?,?,?,C
となる場合、
データの値の大小関係は、
? ≦ ? ≦ ? ≦ C2 ≦ ?
もしくは
? ≦ ? ≦ ? ≦ ? ≦ C2
となる。いずれの場合も
Med2 ≦ C2 (4)
である。
したがって(1)(2)(4)より
Med2 ≦ C2 < C1 = Med1
すなわち、Med1 > Med2
[3]場合3:Cが中央より前半にある場合
[3-1]Cが中央より1つ前の場合
データを小さい方から並べると
?,C,X,Y,Z
となる場合、すなわちCが中央より1つ前にある場合を考える。
Xのデータの値がMed2となる。
X,Y,Zには、AかBの少なくとも1つが入る。
Aが入る場合、
C2 ≦ A2 (5)
が成り立つ。(1)(3)(5)より、
C2 ≦ A2 < A1 < C1 (6)
したがって(2)(6)より
A2<C1=Med1
Bが入る場合、
C2 ≦ B2 (7)
が成り立つ。(1)(3)(7)より、
C2 ≦ B2 < B1 < C1 (8)
したがって(2)(8)より
B2<C1=Med1
以上から、X,Y,ZにAが入る場合、Bが入る場合いずれにおいても、
X,Y,Zのデータの値にはMed1より小さいものが少なくとも1つ含まれる。
従って、X,Y,Zのデータの値のなかで最小であるXのデータの値は、Med1より小さい。
Xのデータの値がMed2であるから、Med1 > Med2
[3-2]Cが中央より2つ前の場合
データを小さい方から並べると
C,X,Y,Z,W
となる場合、すなわちCが中央より2つ前にある場合を考える。
Yのデータの値がMed2となる。
X,Y,Z,Wには、AとBの2つが入る。
Aについて、
C2 ≦ A2 (9)
が成り立つ。(1)(3)(9)より、
C2 ≦ A2 < A1 < C1 (10)
したがって(2)(10)より
A2<C1=Med1
Bについて、
C2 ≦ B2 (11)
が成り立つ。(1)(3)(11)より、
C2 ≦ B2 < B1 < C1 (12)
したがって(2)(12)より
B2<C1=Med1
以上から、X,Y,Z,Wのデータの値にはMed1より小さいものが少なくとも2つ含まれる。
従って、X,Y,Z,Wのデータの値のなかで2番目に小さいYのデータの値は、Med1より小さい。
Yのデータの値がMed2であるから、Med1 > Med2
[4]まとめと一般化
いずれの場合にもMed1 > Med2となるから、
データの大きさが5つのとき、データの値がそれぞれすべて小さくなった場合に、Med1 > Med2となる。
データの大きさが5つでない奇数のときにも、場合1,場合2については同様に証明される。
また、場合3については、Cが中央よりn個前にある場合、Cより後ろにMed1より小さい値が少なくともn個あるため、Med1 > Med2となる。
よって、データの大きさが奇数のとき、データの値がそれぞれすべて小さくなった場合に、Med1 > Med2となる。
さらに、データが大きさが偶数のときでは、Cが中央値の算出に用いる中央の2つの値に入るとき、その後半にある場合、その前半にある場合として場合分けすることにより、同様に証明される。
したがって、データの値がそれぞれすべて小さくなった場合に、Med1 > Med2となる。
証明おわり
おわりに
2015年 センター試験 数学 I+A 第3問 の類題がチャート式に載っていて、解答で上記のことが自明のように書かれていたことが発端です。
検索しにくいので考えてみました。一応、自分の中では納得。