これから夏目漱石をちゃんと読んでいきたい。その予習のために読みました。
作品ごとに簡潔な評論が書かれているんだけど、ここは予習じゃなくて復習で読むべきだなと思った。人間関係が複雑なのに粗筋の紹介が簡単すぎて、どんな話かよく分からない。作品を読んだことがある人向けに書かれているように感じた。あとで再読したい。
と、理解が及ばなかったところもあったけど、漱石の人となりや人生観を知れたのはよかった。例えば、
一旦起ったことは、表面に出なくとも生き続け、突如として現れることもあるだろう。それは「過去」に対する漱石の考えでもあった。
といったことは、今後作品を読んでいくヒントになりそう。
あと印象に残ったのが、漱石に対する著者の態度。愛のある遠慮のなさが面白かった。ロンドン留学中のエピソードで、
(漱石は)シェイクスピア学者のクレイグの個人指導を受けることになった。「一時間 5 shiling ニテ約束ス 面白キ爺ナリ」と漱石は記している。変人同士で気が合ったのだろう。
とか、奥さんと娘さんの写真について、
「御ふた方の御肖像をストーヴの上へ飾つて置た」ら、「下宿の神さんと妹」(ステロードの宿)が見て、「大変可愛らしい」とお世辞を言ったので、「何日本ぢやこんなのは皆御多福の部類」で、美しいのはもっと沢山いると「愛国的気焔を吐いてやつた」。上機嫌である。
とか、笑ってしまった。
先日『坊っちゃん』を読んだ。次は『行人』を読みます。