『独学大全』の次の一節が印象に残っていた。
数学の強力さの根源の一つは、我々の直感や感覚から離脱しても、誤らず迷わず推論が続けられるように、作られているところにある。日常の感覚や想像力から離れる手立てや、その際に足がかりになる定義や遵守すべき推論ルールは、必ずどこかに明記されている。
読書猿著 『独学大全』 ダイヤモンド社,2020,p.726
最近数学を勉強し始めて、この言葉をすごく実感することがあったので、そのことについて書きます。以下のような場面です。
次の命題の真偽を述べよ。ただし、x,yは実数とする。
x + y ≠ 3 ⇒ x ≠ 2 または y ≠ 1 (1)
数学が得意な人なら直感や感覚で分かるのかも知れないけど、自分にはきつい。x + yが3じゃない、と言わると、可能性が無限にあって確かめようがない気がしてしまう。さらに結論の方も、xが2じゃない、でさえxに無限の可能性があるのに、またはyが1じゃないって…もうごちゃごちゃしてしまうのです。
で、ここに、次の推論のルールがある。
命題とその対偶の真偽は一致する。
このルールによれば、命題(1)の真偽は、次の命題の真偽と等しい。
x = 2 かつ y = 1 ⇒ x + y = 3 (2)
めーーッちゃ自明に見える!真!これは真!!
という経験をしたのでした。不思議だし面白い。命題(1)も(2)も、数学的には同じことを言い換えてるだけなんだろうけど、自分的分かりやすさには雲泥の差がある。
ホモサピエンスの脳の仕組みが関係しているのだろうか。(自分に数学的センスがないだけの可能性も低くないかも。。。)