書きたいことを書きたいだけ

書きたいことを書きたいだけ書くブログ

太宰治『斜陽』を読んだ

 

心に残った一節。

 

ああ、お母さまのように、人と争わず、憎まずうらまず、美しく悲しく生涯を終る事の出来る人は、もうお母さまが最後で、これからの世の中には存在し得ないのではなかろうか。死んで行く人は美しい。生きるという事。生き残るという事。それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしい事のような気もする。

引用:太宰治 『斜陽』 新潮社 p.149

 

同感。生きるということは、ままならない。まじで。

美しく死ぬか、醜く生きるか、二者択一しか無いように思われる。

 

お母さまは美しく死んだ。

 

かず子と直治は、二人とも生きようとした。

だが、最終的にかず子だけが生き残ることを選択し、直治は死を選んだ。

この違いは、強さ弱さでなく、端的にかず子が女で、直治が男だったからではないかと思った。

すなわち、子どもを産めるかどうか。

 

お母さま、かず子、直治。三人の運命は小説内で決した。

残る一人、上原がどうなるかは記されていない。

太宰が小説の外で、身をもって記したのだろうか。

 

mura-sou.hatenablog.com