!ネタバレあります!
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ご注意!ネタバレありの感想です。
ベトナムの戦場で、主人公のジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)は瀕死の傷を負う。
死にゆくジェイコブが、精神世界のニューヨークで、自身の死を受け入れるまでの物語だ。
ストーリー自体は分かりやすい。
だけど、散りばめられたメタファーと、強烈なビジュアルで、何度も見たくなる。
精神世界のニューヨークで、ジェイコブは数々の悪魔に遭遇し、地獄を体験する。
どのシーンも恐ろしいが、ストレッチャーに乗せられたジェイコブが、病院の奥深くに運ばれるシーンは、すさまじい禍々しさだ。
始めは普通の病院だが、運ばれるうちに周りは廃墟となり、狂人たちが徘徊する病棟となり、しまいには肉片や血液が散乱しはじめる。
悪魔の正体は、物語の終盤にジェイコブの整体師のルイス(ダニー・アイエロ)が教えてくれる。
生への執着や死への恐怖が、悪魔となって表れているのだ。
そう考えると、病院という施設は、人間の生への執着・死の恐怖を象徴するような場所だからこそ、最も地獄に近くなったのかなあ、と思った。
また、生への執着のもう一つの象徴と感じたのが、ジェイコブと同居しているジェジー(エリザベス・ペーニャ)だ。
この精神世界では、ジェイコブは妻や子供を捨て、若いジェジーと同居している。理由は、彼女の性的な魅力のようだ。(胸をはだけているシーンが多い。魅力的!)
性と生は、ある意味同じだよなと思う。
そして、彼女ももちろん、悪魔に豹変する。
・・・
整体師のルイスは、こうも教えてくれる。
冷静に死を受け入れれば、悪魔は天使になり、解放してくれると。
地獄を体験した後、ジェイコブは徐々に死を受け入れる。
彼はかつて子供を交通事故で亡くしているが、最後にはその子に導かれ天へ昇る。
子供に手をひかれ、階段を上るシーンには感動した。
・・・
色々と想像したくなる映画で好きだ。
例えば、ジェイコブとジェジーの別れのシーンは次のようなもの。
涙ながらに
「行かないで」
と言うジェジーを、ジェイコブは
「許してくれ」
と抱きしめる。
ジェジーが象徴している生きたいという気持ちは、人にとって大切な思いで、本来悪ではない。
ジェイコブが死を受け入れる前に、悪魔に見えていた「生への執着」と和解するシーンなのかなと思った。
また、ジェイコブが負傷したベトナムでの戦闘は、人間を凶暴にする薬の実験による同士討ちだった、という話がでてくる。
これはジェイコブの精神世界の話なので、真偽は不明だ。
だけど、自分の恐怖心が自分を苦しめるという構図を、米軍の同士討ちにより暗示しているのかなあとか想像した。
他には、映画の中で「家」がよく出てくる。
ジェイコブは離婚する前の家の夢を見るし、冒頭の地下鉄の駅の出口が閉まっているのも、家に帰れないことを示しているようだ。
最後、彼が天に召されるのは家の階段からだった。
戦場で兵士が思うことのうち、「生きて家に帰る」というのは最も強い感情だろう。これが精神にも現れたのかも。
・・・
キリスト教とかの知識があれば、もっと楽しめそうなのが口惜しい!
整体師のルイスを天使みたいだと言うシーンがあるけど、小太りの可愛いおじさんの天使っていいキャラで好きだ。
そして、ジェイコブの子供役のマコーレー・カルキン君めっちゃ可愛いです。